遠征日記 4月20日
<三浦豪太日記>
昨夜から感じた病感は深夜になって本当になった
体中が火照り、節々が痛み、鼻は鼻づまりとなり呼吸不能となり、口から呼吸しようとすると喉の奥が焼けるようにいたい。
完全に風邪の症状だ。しかもかなりひどいほうのもの。
朝起きて、SPO2を計ってみると、SPO2は83と通常なのだが、心拍数は109ときている。寝返りをうっただけでこれだ。
体中が脈を打っているようだ。
今日、本当はロブチェ出発の予定だが、身体は無理だと叫んでいる
そこで、ここで僕だけ一日遅れたらどうなるかということを考えてみた・・・。
本隊のロブチェ滞在は二日間ある、先発は一泊のみでBCを偵察する。
先発には僕はもともと含まれていなかったので、大丈夫。
今日、いけなかったとしても翌日、本隊がロブチェに滞在している間に追いつけばいいか、
と思い、父に相談して、もう一日ディンボチェで風邪を治すことにした。
唯一の心配ごとは父の生理モニター。それは兄に頼むことにした。
みんなは8時45分くらいに出発する
みんな心配そうな顔をしてくれるが、むしろ今日一緒に行動するほうが危険だ。
僕自身は昨日、父と一緒に歩いた時の状態以上にひどい、そしてもし一緒に行動してみんなに風邪を移してしまうことも考えた。
みんなを見送り、しばらく部屋に戻り寝る。
シェルパのペンバが残ってくれた、彼はしょうが紅茶を作ってポットで持ってきてくれる。
午前中は本を読んだり、音楽を聴いたりしてすごす。
お昼になってトマトソースのスパゲティを食べる
なんと誰もいない一日が長いことか。
いつもだったら、高度順化トレーニングや生理データをまとめたり、お茶話をしている間に一日は過ぎていく。
考えてみれば、この1ヶ月、グループから離れて行動するのは初めてだ。
ちょっとしたバケーション気分になった。
午後から少し具合がよくなったのでサンルームに行って絵を書くことにした。
前からヤックを書いてみたかったが、なかなかその機会がなかったので、サンルームからヤックを探す。
すると向かいのバティに2匹の子ヤックがいた。
まあ、大人の立派のヤックではないが、ヤック初心者の僕にはちょうどいいかもしれないとおもい、書き始める。
しかし、この子達、なかなか元気で、落ち着いてくれない。そうするうちに目を画用紙に向けていると忽然と姿を消してしまった。どうやら谷の向こうにきままな旅に出かけたようだ。
書きかけのヤックをまえにどうしようか考えていた。
しょうがない、これをベースにヤックを書いてみようと試みる。
毛を長くしたり、筋肉をつけてみたりするとなかなか様になる。
そのうち、バティの女将さんもサンルームにはいってきて、
「あんた、その鼻長いわよ、まるで馬ね」とか「尻尾はもっとふわふわと」とかいろいろアドバイスをもらう。
すると、なかなか威風堂々としたヤックが出来上がってきた。
もし理想のヤックがいたとしたらこんなものだろう、僕はヤックのやっくんと名づけた。
今回は本当にこの画用紙と色鉛筆を持ってきてよかった
おかげで楽しみの幅が広がった
夜、夕食時、SnowLionロッジにスコットランドから来たカップルとチェコから来たお客がいた。
トレッキングでBCまでいってくるという
世間話をしていると、風邪に効くからといって、ビタミンCをもらった。なかなかいい人たちだった。2ヵ月後日本に来るというから、もし東京にくるなら、鎌倉はいっぱいお寺や大仏さんがあるからいいよ、僕はその隣の逗子という駅にいるから、暇だったら案内するよ、といった
しかし、僕は鎌倉の歴史や大仏についてくわしくない
寝る前にまたまた安請け合いをしてしまったと思いながら、明日は風邪がよくなりますようにと祈りながら眠った。
<ヤックのやっくん>
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