遠征日記 4月22日

<三浦豪太日記>

今朝起きた時、昨日までの感覚と確実に違った。
朝起きたときはまだ確実にはいえなかったが、昨日まで感じていた喉の奥が焼き付けられるような感覚が去り、もしかしたら風邪が治ったかもしれないという感覚が朝の目覚めでわかった。
高度は4900、最初に来た高度で朝の目覚めがあること事態僕のこれまでの経験であまりなかったことだ。
ロブチェに最初に来るとまるではじめての遠足に来た時のように眠れない。
別にこれからの行程に興奮しているわけではないのだが、単純に酸素が少なくなるため、夜眠れなくなり夜中、いろいろ考えている。
その点、昨日の夜は眠れた。
前日と前々日、風邪がひどく、眠りが浅かったせいだろう、おかげで寝た感とがある。
まだ、体を動かしていなかったので、どれくらい歩けるかまだその時点ではわからなかったが、とにかく昨日ロブチェに来た時よりも大分ましな歩き方ができるだろうという予感が朝起きた時に感じた。

今朝感じた感覚は正しく、昨日よりもよっぽど楽に歩くことができた。
昨日までは高度順化後退とまで疑ったが、やっぱり風邪でよかったと、場ちがいな感動を覚えながらゴラクシェプまで行く
ゴラクシェプは現地語で「カラスの墓場」ということを以前に父に教わった。
実は本当にその意味があるというのは確認していないが、もし本当だったら、つける地名の名前としてはあまりよくはないのではないかと思う
前に見たスティーブンキングの映画と小説になった<ペットセメタリー>を思い出す。
ゴラクシェプは一般のトレッカーが歩いていける限り、もっともよくエベレストが見える、カラパタールのという小高い丘の入り口にある。
その為、世界各国からエベレストの雄姿をその目で見ようと集まるのだ。 
しかし、滞在スペースに問題があり、前回03年に来た時は2つのバッティ(宿)しかなかったため、一泊目はバティ、二晩目は追い出され、テント泊となったことをゴラクシェプに入る前に思い出した。
今回はYeti系列のバティがひとつ増え、そこに泊まれることになった。
Yetiは航空会社で数年前からトレッキング事業に本格的に取り組んでいる。主なルートはルクラからナムチェを経由してターメに行きそこからヘリでなんとナムチェの向かいにあるコンデリの麓にあるホテルまで一気に飛んでいくのだ。
その行程にあるすべてのホテルはとても立派で、ナムチェまでの道中、どのようなホテルなのかいつも気になっていた。
Yeti系列のバティだと聞いて、僕は少し気分が高まる
このバティはプレハブで、カトマンズで作られヘリコプターで輸送されてきたという。
中に入ると確かに新しい雰囲気がある。壁はまだ綺麗に白く、カウンターのガラスもこれまで見たくすんだ色ではなく、綺麗に中に陳列さらた商品が並んでいるのが見える。
真ん中にストーブがありそれを遠くに取り囲むように席がある。
お昼はみんなパスタを頼んだ。
ここにきて初めてアルデンテのパスタだった。みな一様にびっくりする。
パスタがアルデンテというだけで、その他の条件、パスタソースやスパイスなど無効にする作用がはたらき、美味しく感じてしまうのだ。
一同は、おおむね「むむ・・・おぬしやるな」的な感想を述べた。
しかし、気になるのが、アルデンテなのはいいが、パスタに芯が多少残っていること。
果たしてこれは意図してできたものか、疑問が残る。

午後になり、先発に出発した村口さんと五十嵐さんが帰ってくる。
BCの状況を聞くと、いたるところにテントがあるという。
今回は推定50隊がここに集まっている。ということは一隊最低10個テントがあったとしても500個はテントがある。
村口さんと五十嵐さんの話によると、テントはいたるところにあり、そして僕たちの隊のBC場所はそのテント村のど真ん中にあるというのだ。
しかもご丁寧にネパール軍の目の前にあるという。
前回はBCのはずれでとても、プライベート感のあふれるBCリゾートともいえるところだったので、今回に限り、これほど遅れてきたのになぜそのような真ん中になったか不思議だった。
どうやら、みんな今年のレギュレーションの厳しさから、ネパール軍の目の前がまるで台風の目のようにあけていたというのが僕たちの見解だ。
そして、気になる今年のレギュレーションだが、どれほど取り締まりの雰囲気が高いということを聞くと、みんなそれぞれ、通信機器をネパール軍にドラムで預け鍵をかけ、必要な時に箱から取り出す、セルフ・レギュレーション(自己監視型)システム(?)らしい。
ということはかえって、ネパール軍の目の前のほうが何かと便利ではないかと想定する。
撮影に関しては、少なくともプジャとお父さんがBCに入るシーンの許可だけはもらったというが、まだまだ状況が見えない状態なので、一応カメラも通信機器も隠して持っていったほうが懸命だろうということだった。
インターネットの欧米情報・エベレストニュースでは、一般の観光客もカメラを預けなければ行かないというような内容が書かれていたため、心配したが、ここゴラクシェプでもそれほど緊張感のあるような雰囲気ではないので少し安心した。
夕方、みんなはカラパタール方面に行った。僕はまだ病み上がりなので、休むことにした。ストーブの前を見ると村口さんがいた。
村口さんと宮崎駿アニメを通した人生観と最近のエヴァンゲリオンといったアニメが伝えようとするテーマなど深く、それでいて非オタク的に語り合ったつもりだが、はたから聞いているときっととてもオタクチックに聞こえただろうなと思う。
ちなみ、夜判明したのだが、五十嵐さんが食べたパスタはベッチョリ系のパスタだった。やはりお昼のパスタは偶然の産物だったのか…

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BCに向けて僕たちの荷物を運ぶヤックたち

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